ある販売員から聞いた、工房修行の一側面について
昨日、良い話を聞きました。
あるお店で傘(織りのきちんとした作りの傘)を購入したのですが
そこで熱意ある接客をしてくださった店員さんが、過去、新潟県十日町市で着物製作を学ぶために工房で7年間修行をやっていたと聞きました。
そして、そこでの修行の様子を教えてくださいました。
工房での修行の厳しさ…"その仕事だけでは食えない"、"親方や先輩が厳しい"、
そういったことは良く聞きます。
が、その販売員の方が話してくれた"厳しさ"、の内容をよくよく深掘りすると、
・弟子たちが殴られるのは日常茶飯事
・柿渋を投げつけられて頭から浴びる、
・他にも諸々、指導というよりイジメ…?のような仕打ちを受けた
など…
志高く持って入ってきた若者たちも、1人2人とやめていき…自分が話を聞いた定員さんがその工房に最後まで残り、
そして、
その方は、自分は一通り技術を身につけた。腕一本で生きていける、と自信がついた段階で辞めたそう。 今はフリーランスの着物デザイナー兼販売員で生きているそうです。
話を聞いて、複雑な気持ちになりました。
今の若者はヌルい、とか、鉄拳制裁だ!というやりかたも確かに否定はできませんが…
そのやり方は愛のある厳しさなのか、単なるシゴキなのか。
いずれにせよ、シゴく相手に、シゴくなりの理由や愛情が伝わってないと単なるイジメだよな、とも。そのやり方、自分たちの首を絞めているだけだと気づかないのだろうか…。
工房の後継者不足、というテーマは良く聞きますが、その問題を突き詰めていくと、どの業界にも共通する、極めて普遍的なテーマに行き着くな…と最近思います。
例えば先人たちの、自身の経験への固執と変わることへの抵抗感だとか。
そういった問題の解決方法も、各々の業界特性をちょっと味付けした、共通のアプローチになるのかな…なども思います。
ポーンと、すぐ、解決方法が出てくれば良いのですけどね。
そんなこともつらつらと考えましたが。
品質、デザインともにとても気に入った傘を手に入れられて、しかも考えの種になる面白いネタまで教えていただき、ラッキーな日でした 笑
店員さん、ありがとうございます!
ちなみに。
購入した傘はここのものです。江戸時代から続く織りの傘のお店。山梨県にあります。
とても品質が良いものをきちんと提供くださってます。修理もしてくれるそうです。
予測、予見をしすぎることと機会損失について。
気持ちが上がる記事を読みました。
https://superceo.jp/sp/tokusyu/athlete/100435
自分は為末さんの、ストイックであって且つ柔軟でもある生き方がすごく好きなんですが、この記事を読んでまた一つ好感度が上がった気がします。
インタビューでの回答一言一言に、まさにその通り!と思うものばかりでしたが、個人的には以下のコメントがささりました。
〉実は僕、考えが浅いんでしょうね。予測が浅いから、決定が思い切りよく見えるみたいなところもあると思います。
〉予測、予見が重要でもあるけれど、そうすることによって、時間をロスすることもあるでしょう。
ここはまさに今の自分にグサリと。
考え方の癖がついてしまっていて、つい、予測しよう予見しよう、その未来に向けて自分はどう動こうか、と考えてしまうのですが…
もう世の中、予測がつかないことばかりがおきるとわかっている話じゃないか、そこで考えすぎて身動き取れなくなったらそれこそ終わりだ…いうことです…。
自分の経験を振り返っても、若干の思考+えいや!というタイミングを見ての勢い・直感で判断を下したモノゴトの方がうまくいった気がします。
考えすぎることによる機会損失。その怖さはよく良く理解しておかないと。タイミングや勢いってやはり、とても重要です。
といっても、習慣付いた癖はどう直せば良いのか…。日々自分に言い聞かせるしかないのでしょうかね…。まずは21日間、自分に言い聞かせてみようかなと思います。(3週間、新しいことを続けると習慣化して自分の中に定着するというので。これは自分でも実証済みです。)
落合陽一氏が語る「クリエイティブな力を磨くための4つのキーワード」、について
現代の魔法使い、と言われている落合陽一さんが「クリエイティブな力を磨くために意識すること」を語ってる動画を最近見まして、なるほど…と思ったので紹介します。
「分析、改造、鑑賞、そしていたずら心」…この4つを磨くことが大切なんだそう。
簡単に解説すると、
●分析…世の中でおこってることの仕組みを理解すること
●改造…それを自分にとって良いように、すこし手を加えて実践してみる
●鑑賞…良いものを見て鑑賞眼を磨く…というよりは、むしろ、悪いものを見ない。悪いものを選別して、捨てる習慣をつける
●いたずら心…言葉のこと、そのまま。ちょっと一ひねりして楽しむこと
確かに、周囲にいるクリエイティブな人たちを見ると、この4つが行動に表れているなぁ…と納得。
では一方、自分に置き換えてみると…と考えてたら、今の自分はすごく偏っているなぁと感じました。
分析、鑑賞は出来ている気がします。むしろ好きな領域なので意識しなくても普段から勝手にやっている。一方、改造といたずら心、については…。
少し救われたなぁと思ったのは、落合陽一さん曰く、特に「いたずら心」については
磨けるらしい、とのこと。(いたずら心、ってセンスや性格の問題では?と思っていたので…)
今の自分を振り返るいいきっかけにもなったので、これから、改造すること、いたずら心を出すこと、クセづけしてみようと思います。
男性雑誌の提案に朝から感心こと、について
朝、日経新聞を読んでいて、面白い広告が目に入ったので調べてみました。
これです。
上手いな!と思いました。
男性誌UOMOウオモの広告なんですが、11/22 いい夫婦の日に、愛妻家で知られる俳優をアイコンに、「10のこと」という分かりやすい提案。色々仕掛けをしてます。
特にいいツボついてるな、と思ったのが提案の10コ目、「シートマスクをプレゼント」という提案とともに資生堂とタイアップして、シートマスクの販売を提案してるところ。(狙いが分かり易すぎですが)
でも、「妻に何をプレゼントすればいいか迷う&選ぶことに面倒臭さを感じる夫」に対して、「コスメ分野で女性からの信頼感抜群の資生堂」の「シートマスク(女性に大人気のスキンケアグッズ)」を提案している、というところが、ポイントをどこも外していない感じがします。
あえて言うならマスクの値段でしょうか…。夫の足元見て&妻の1回切りの使用でも確実に効果が出る様に…というところを狙っているのか、なかなかお高めの資生堂ブランド製品のシートマスクを準備。でもこの提案で、シートマスク、結構売れそうですね…。
一つ気になったこととしては。
そもそも新聞を広げてみる習慣の人が少ない今、この広告を誰が見るんでしょう?というところ。少なくともアプリで新聞を読む習慣がある、自身の夫はこの広告を見ることはないでしょう。(よって花もマスクも我が家には来ないでしょう。残念…。)
ただその一方、
この広告の狙いは40代以降の男性かな、とも(新聞を読むことに比較的まだ馴染みがある世代?)。
というのは、シートマスクを提供する資生堂ブランドの対象年齢(妻側)が、その年代向けのものだから。この広告、壮年層のちょっと後半、中年層に向けてきっちりターゲットを絞っているのかもしれません。
か、もしくは、比較的新聞で読む習慣がまだ残っていそうな日経新聞読者…特に金融業界のヒト向けなど…?年齢や業種など色々考えると、シートマスクの価格もまぁ納得できます。
最後に。
今回は妻に向けてのプレゼント、といった切り口の提案が表面的に見えますが、実はこの広告、翻って、では夫側は…というスト―リーまで考えられているのかもしれません。色々仕掛けがありそう…。
うーん、やはり、この広告はよく考えられていると思いました。
五島美術館 七宝焼展について
五島美術館、とても好きな場所のうちの1つです。
閑静な住宅街を歩いていると急に出現する美術館です。ロケーションがまたいい…。
で、そこでとても興味惹かれる美術展がやっていることを最近しりました。12/3までとのこと…。見に行きたい…。
七宝、最近とても心惹かれる工芸品の1つです。あの艶やかな美しさ、まさに「七宝」の名前の由来の通り。(金、銀、瑠璃、瑪瑙など、仏教上の七つの宝に比肩する美しさをもつことからその名が由来しているそう)
かつては京都、山梨、石川、東京などでも七宝は盛んだったそうです。
が…「一子相伝」「他言無用」というしきたりに阻まれ、現在では「尾張七宝」のみになったとか…。
最近読んだ本に七宝職人のインタビューが載っていましたが、
そこにはこう書かれていました。
「今の日本のせわしないリズムに七宝は耐えられない。」
(なぜなら完成までにかなりの時間を要するため。例えば花瓶1つでも3年はゆうにかかるとのこと)
これ、どの工芸品にも共通する課題ではないかな…と。
このセリフを読んで、では工芸品の精度をとことん高め、ハイブランド、ラグジュアリーに転換していくのか、もしくは工程を簡素化などして廉価版をつくっていくのか、どちらが正しいのだろう…と、ふと考えました。
きっと工芸品と産地の特色により、打開策は違うのだろうけれど。
ともかくも、この展示会、とても楽しみです。会期中になんとか行きたい…!
産地のアイデンティティについて思うこと、について
この前の続き。
この方のロングインタビューで、
お、と思ったことについて続きを書きます。
滋賀の信楽焼の地で、自分のお店を開き、新たな陶器の可能性を探って頑張っている方のインタビュー。
https://www.kougeimagazine.com/crafts_now/171102_nota/
"産地に作る力があるとして、僕がそこで重要だと考えているのは、翻訳能力なんです。クライアントが求めるテイストに対して、産地の知識やノウハウをいかにつなげられるか"
心に引っかかったポイントが幾つかあるので、以下確認しつつ。
産地に作る力があるとして
→これがあるところと無いところの見極め、難しいと思っていました。今まで。
産地として今も活気がないところ…その理由は、実は実力が足りていないのか、単にPRが下手だからか…etc
ただ最近思うのは、結局、作る力が培われるかどうかはマインドの問題に尽きるな…ということです。今のこの、負けている状況の要因を分析した結果として、その理由を他責(我が身の実力を顧みず、消費者やマーケットのせいにするなど)にしないマインド。
正確に世の中に起こっていることを捉えられて他責にせず、自分たちの立ち位置を振り返って動き続けていれば、産地に作る力は蓄積されていくんでないかなぁと。個人的見解です
翻訳能力
→全く同じことを、他の産地で活躍しているあるデザイナーさんより聞いたことがあります。
要はキュレーション(翻訳)をどうするか、切り口の問題だと。産地がそれぞれもつ素材をどう料理するか…と言う話
産地の知識やノウハウ
→まさにこれが、産地ごとのアイデンティティを体現するものだと思っています。
例えばわかりやすい例として、陶磁器。
日本各地には色々な陶磁器があり、それぞれ、その地でしか取れない土を使って、ものづくりをしている…だから、有田焼、益子焼、信楽焼…と差別化をすることが、"今までは"できていたのだそう。
でも実は今は、その素材の土が共有化されつつある実態があるとのこと。(実は〇〇焼も✖︎✖︎焼も、同じ素材の土を使っている…など)
もはや素材の違いで各産地の特色を語ることはできない…では何で語るか、というと、もう、それぞれの産地で培ってきた技術や知識でしかない訳です。そこが特色になり、アイデンティティとなる。
しかしここで問題となるのが、長年産地でやってきた人達が、技術や知識を踏まえて、"自分たちは何者か"、ということが語れない状況が多くの産地にて発生している…という現実。
辛辣な人は、伝統工芸、という名前に胡座をかいて、自分たちの持つ価値を振り返ってこなかった結果だと酷評していました。
突破口を開くために苦しんでいる各産地の、この状況を打開するには何が必要なんだろう…とぼんやり考えます。
確実に必要なのは信念とブレないマインドを持った人材。前回も書きましたが、調整ごとをする人、早く成果を出す人。違う切り口では地元/ヨソモノそれぞれ、信念持った人…で物事を引っ張れるリーダー。年齢層もそれぞれバラついて必要かもしれない。
もしかしたらそもそも"伝統工芸"、"産地"の再定義が必要な段階にきているのかもなぁ…とも考えたり。
話がまとまらなくなってきたので、とりあえずこんなところで。
ともかくも、最近読んだインタビューの中では一番、色々と考えさせられたものでした。
工芸産地の衰えを食い止めるために必要な人材について
滋賀の信楽焼の地で、自分のお店を開き、新たな陶器の可能性を探って頑張っている方のインタビューを読みました。
https://www.kougeimagazine.com/crafts_now/171102_nota/
この方の様に各地で頑張ってる人達は沢山いますし、言い方は悪いけど似た様なインタビューも結構あったりします。
ですが、自身はこのロングインタビューを読んで2つの箇所に、お、と共感を覚えました。
心に引っかかったところ…その1
"産地全体としてとか、組合一丸となってというのは難しい。何年間かいろいろ試してみたけど、調整することが業務になるばかりで、これは無理だなと。もうひとつ僕が感じたのは、力がない状態で10社集まってもうまくいかないんです。それよりも、まずは切磋琢磨して、それぞれに力をつけた段階で数社集まってやり方を考えるとか、外からの力をうまく使うとか。そうやって産地をうまくプレゼンしていかないとダメだと気づきました。"
これはほんとに、色々とトライしてきた方だから言えるセリフだなと…。
調整ごとは必要なんだと思います。誰かがやらないと、その地の組織は動かない。
その地のキーパーソン達に働きかけられる、それこそフィクサー的存在(言葉のイメージは良くないかもですが)が必要と思ってます。
一方、産地はものすごいスピードで衰えていく訳で。だから比較的早く効果が見える方法も誰かがやっていかなければ。このインタビューの方は、後者を選んだんですね。
産地を変えたければ、
信念と覚悟を持った、調整ごとをする人/効果を出す人、がお互い両輪のように、関わりながら
動いていくことが必要なんだろな…という個人的感覚を持ってます。
この信楽の地には、調整に走り回れる存在はいるんだろうか。このインタビューの方のような人たちを支える黒子的存在みたいな人が。
最近、信楽焼を取材された人から、いかに信楽焼の産地が(地域の工芸団体のモチベーション含め)衰退の一途を辿っているか…嘆かわしい話を伺ったタイミングだったので、このインタビューがとても気になりました。
あと誤解を恐れず言うなら、ですが、
自身は産地のフィクサーというか、調整役になりたかったよなぁ…とも、ちょっと思い出したり。まぁ、根気も忍耐も交渉能力も必要そうだし考えるだけで胃に穴が空きそうな仕事かもしれませんが…。
心に引っかかったところ、その2はまた後日に。